官民連携、その前に。
「行政は独占企業です。それが最大の特徴です」
そんなことを仰ったのは、かつての上司(の上の上の上の…上司)。
実に含蓄のあることばだなと思います。(ほんとです)
いろいろな意味合いがこめられているこのことばの中で、今日取り上げたい要素は
「行政の顧客(行政サービスの対象)はすべての人。行政は顧客を選べない。」
ということです。
例えば国家なら「国民すべて」だけでなく、外国からの観光客などもサービスの受け手になります。
自治体なら「その市に暮らす人」だけでなく、訪れた人、活動する会社や団体などもサービスの受け手になります。
単純な例を出すと、道路を使う人は限定できないですよね。「市民の方以外は使わないでください」なんて出来ない。
特に大都市自治体だと、関わる人や会社や団体や観光客だから…無限です。(なんということでしょう)
とはいえ、優先度の高い、というか外してはいけない顧客層はあります。
いわゆる社会的弱者と呼ばれる方々です。
心身、経済、家庭状況など様々な理由から、他者よりずっと不利な状態に置かれている方々。
この不利な状態をやわらげるよう、行政は福祉などの施策を打っています。
暮らしを豊かにしたり便利にしたりは、たくさんの企業がすでに取り組んでいて、行政が直接何かする機会はまずないです。
(例えば、行政がスマホに代わる情報機器を直接開発するとか、、ナイです。連携して法規制を検討したりはしますが。)
ところで、全然話変わりますが、イノベータ理論はご存知ですか?
ご存知ない方は適当にググってみてください(うまく説明できないので…)。
例えばこちらキャズム理論とは-ハイテクマーケティングの定番 | カ行 | マーケティング用語集 | 株式会社シナプス。
ええと、イノベーション(新しい概念・モノなど)が普及する理論のことなのですが、
すごくテキトーに言うと、人は次の5つに分類されると。
①新しいモノにすぐ飛びつく人(イノベーター)
②新しいモノか好きで、早めに飛びつく人(アーリーアダプター)
③流行り始めると飛びつく人(アーリーマジョリティ)
④世の中に定着したら始める人(レイトマジョリティ)
⑤まず手をつけない人(ラガード)
これを下敷きに考えを広げてみると、
①新しいモノにすぐ飛びつく人(イノベーター)
→新しい時代を切り開いていく人
②新しいモノか好きで、早めに飛びつく人(アーリーアダプター)
→新しい時代にすぐさま付いていく人
③流行り始めると飛びつく人(アーリーマジョリティ)
→変化に敏感で、時代についていって担っていく人
④世の中に定着したら始める人(レイトマジョリティ)
→時代遅れと言われながらも、取り残されはしない人
⑤手をつけない人(ラガード)
→取り残される人(あえて追従しないことも)
てな感じかなーと。
さて、行政は顧客を選べないし、社会的弱者と呼ばれる方々は特に外せないと書きました。
上の分類に当てはめていくと、⑤のラガードに該当する方々が、外せない顧客になってくるのかなーと思います。
時代や取り巻く状況が変化しつつも、それに対応できないことで、不利な状態に追い込まれる方々。
自力で脱出できなければ、寄り添って支援する必要があります。
しかし、しかしです
個別に寄り添って、対人援助技術を使いながら支援をするには、潤沢な人材が必要で…
さらに、多大な時間と労力がかかります
それでも効果が実を結ばないこともしばしば。
寄り添って守るだけじゃジリ貧、というのは否めません。
で、逆説的ですが、ラガードを守るためには、イノベーターの視点で攻めの解決策も必要になってくると思うのです。
新たに制度を作ったり、改正したり。
法制度でなくとも、新たなニーズに対応する事業を立ち上げたり。すでにたくさんの例がありますが。
ジリ貧から脱するために、打って出る!みたいな感じですね。
で、何が言いたいかというと
行政はラガードに寄り添いつつ、イノベーターでなくちゃいけない
ということです。
二面性を持たなきゃならん、ということです。
でも、これって矛盾をはらんでるし、そんな風に役割を使い分けるってすごい大変ですよね。
そもそも普段ラガードに寄り添っている立場としては、イノベーターなんて苦手そのものです。
で、
官民連携の行き先はそこらへんにあるんじゃないかな、と思ってます。
行政が苦手なイノベーターを民が提供し、行政は民のイノベーターを現場ニーズにマッチングさせていくとか。
官民連携ということばが浸透し、流行りつつあります。
その前に、、行政の特質に目を向けたらどうかなと思い、いまのぼくの考えを整理してみました。
長々お付き合いいただき、ありがとうございました。